中東からヨーロッパへ向かう途中の難民キャンプをサーモカメラで撮った映像を元にした一連の作品を黒地に銀のインクで印刷。張りつめた緊迫感が伝わる作品は、出版元では早々に初版完売となった。232p 32x25cm ハードカバー 2018 English.
リチャード・モスは今も続いている難民や移民の危機をドキュメントし、軍隊並みのカメラ技術を使い政府や社会が難民をどのように認識しているかに向かい合うことにここ数年間を費やしてきた。本書は中東・中央アジアからトルコ経由で欧州連合へと向かう大型移民ルートに位置する難民キャンプを入念に記録したものである。 モスは、長距離国境警備のためのサーマルビデオカメラを使用して高い標高からのキャンプを撮影し、近隣の市民インフラとお互いどのように関係しているか、あるいは切り離されているかへの注目を引き起こす。 それから彼の素材映像は数百の個々のフレームに分解され、格子状にデジタルで重ね合わされて複合ヒートマップが作成される。
時間と空間を切り捨てたモスのイメージは、永久にに亡命を待ちビザンチン様式のリンボ(辺獄)に囚われてしまった難民の生きた経験を語る。 本書は28の場面に分かれており、それぞれ注釈付きの一クローズアップ画像の連続がパノラマ状のヒートマップの中にに折りたたまれている。モスはこのフォーマットで、キャンプが仮設であること、さまざまな形で疎外され、隠され、規制され、軍事化され、統合され、分散されていることを強調する。 彼の作品は、グローバル化された資本主義の活発な自由貿易と、欧州国家における国際難民法の崩壊との間の鮮明な断絶を指摘している。 カフカの1926年の小説にちなんで名付けられた本書『The Castle(城)』は、 難民の「可視性」と人権の崩壊についての問いかけを促す。
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