アメリカ人フォトグラファー、ロン・ジュード(Ron Jude)の作品集。フランスの実存主義小説家であるジャン=ポール・サルトルが1938年に著した「嘔吐」からタイトルを採った本書は、1990年から1992年の間にアメリカ、ルイジアナ州バトン・ルージュとジョージア州アトランタにある公立学校の室内を撮ったシリーズ作であり、「OTHER NATURE」「ALPINE STAR」「LICK CREEK LINE」「LAGO」といったロン・ジュード作品が生み出された25年間の制作の根幹となった一作である。ただ記録したのみの画像にとどまらず、学校の窓や出入り口、壁の割れ目から誰もいない教室や廊下を覗き見ているような錯覚に陥らせる。その過程で鑑賞者は、自らの眼差しの危険性と、見るということの不確かさを徐々に意識し始める。本書の核にあるのはジャン=ポール・サルトルのフィクション文学の意義とまさに同じであり、「哲学的な問いとは写真を通して濾過され消費されうるもの」という前提である。学校という制度や組織の中で学ぶことの陳腐さをテーマとし、写真における物語性の制約と意識との接点を探るステージとして、その単調な空間や物体を本作の中に落とし込んでいる。その鋭い色彩センス、過激とも表現できるフレーミング、敢えて浅くしたフォーカス−そういった作者独特の視覚言語を用い、馴染みがある被写体のように見せつつ、同時に不気味で不穏な空気が蔓延する不可思議な世界を創り出している。 1992年にロンドンのフォトグラファーズ・ギャラリーで初開催された「NAUSEA」展の25周年を記念し刊行。出版物としても展覧会においても未発表のものが数多く収録されている。96p 22x26cm ハードカバー 2017 English.
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