オランダの女性写真家シャルロット・デュマがパレルモの野良犬を撮ったシリーズ。
「パレルモの中世地区のひとつ、バラロにある古い建物の屋上テラスまで数え切れないほどの階段が連なっていた。テラスは白いタイルが敷き詰められ、金網のフェンスで囲まれていた。ベッド、シャワー、トイレ、洗面台がちょうど収まる大きさの小さな小屋のようなものがあった。中にいても、まるで外にいるような気分で、街を見下ろすことができた。ここが2006年春の数ヶ月間、私の住まいだった。 この家のオーナーは、薄くて端正な口ひげを蓄えた快活な男性で、バレエをこよなく愛していた。有名なイタリア人ダンサー、カルラ・フラッチのサイン入りの写真やポスターが壁に飾られていた。彼はアルコという犬を飼っていて、その犬小屋は私の家とテラスを共有していたが、私はアルコが1階下のキッチンテーブルの上で寝ているのをよく見かけた。通りの向かいにある公園には、いつも野良犬の群れがたむろし、暖かいアスファルトと大理石の石畳の上で日陰でのんびりしていた。夜になると、通行人を追いかけて吠える声が聞こえた。やがて私は、古い町並みにそれぞれの縄張りを持つ野良犬の群れ、ランダギのことをよく知るようになった。彼らはクルーズ船ターミナルの港や露店を歩き回り、内臓肉やパネ・コン・ミルザを売る肉屋のスタンドを回っていた。夜になると、彼らのために置かれた段ボール箱の中で丸くなって眠っている彼らを見つけた。彼らは街の複雑な織物の一部だった。当時、街をさまよいながら、私は個々のキャラクターに惹かれるものを感じていた。彼らは名前を持っているものもいた。白い毛が汚れで飽和して灰色になっていた白黒のトムトムや、穏やかな巨犬でバラロの看板犬だったバローネなどだ。今彼らを見ると、ポーズやジェスチャーのレパートリーがあることに気づく。彼らは互いに、テーマとバリエーションに富んだイヌのダンスを披露し、私が彼らのそばで経験したような犬同士の友情を放っている。それにしても、地面に横たわるこれらの犬の体、彼らがしばしばする丸い胎児のような姿勢の静寂、時には地面に彫られた窪みで丸くなり、まるですでに墓の中にいるかのような姿は、重力と時間性を発している。彼らは私に、私たちの死について、そして私たちが他者に対して占める空間について、個々人として、また他の感覚を持つ生物と並ぶ人間として考えさせる。群れや種に属するとはどういうことか。穏やかで謙
虚な集合体を形成している犬たちを観察していると、憧れのようなものを感じる。」(シャルロット・デュマ)
48p 27x18cm ソフトカバー 2023 English
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