クロエやKENZOのフィルムやキャンペーンフォトで活躍するイギリス人フォトグラファー、フィルムメーカーのフランク・ルボンのアーティストブック。ポートレートへのゆるやかな応用でありながら技術的に定義されたアプローチから生まれた本書は、2020年から2023年にかけて撮影された複数の写真シリーズを紹介している。フランク・ルボンが慣れ親しんできた愛する人を撮影するという行為は、プロセスにおいても形式においても極限まで高められている。2020年の暗い時代、フランクは家族や友人を探して指を刺し、血液サンプルを採取するプロジェクトを思いついた。小さなスライドグラスにしみこませた血液のしずくを採取するこの親密なセッションは、伝統的なポートレート写真と対をなした。フランクは、被写体（献血者）にフラッシュに手をかざしてもらい、自分の顔に独特の赤い光の洪水を投げかける。「アイデアのもととなったのはフラッシュの閃光だった。自分の指をフラッシュに押し当てると、光が指を透して私の血液の赤を被写体に映し出す。これまでの重要な作品群と同じく、これは失敗から生まれたのだった。行き場を無くした私の指は、気がついたらそこにあった。」フランク・ルボンは、家族、人生、そして彼の都市ロンドンに住む人々の統一性と類似性を証明する写真を、さまざまなスケールにわたり、幾重にも重なった層を通して探し求める。自分の血液から、血縁者、そしてドナーの血液を必要な患者に運ぶ作業員まで、ルボンはカメラという道具を越えて制作の実践を拡げ、生命-血液の観念をとらえる。指を刺し器具、顕微鏡、スライド板、フラッシュ、そして予期せぬ糖尿病の診断が、それまで当たり前だと思っていた生物学的プロセスに対する彼自身の関係を一変させる。4色オフセット印刷と特別な光沢で掲載された美しい写真シリーズに加え、ルボンをフランスのシュルレアリスム写真家ジャック＝アンドレ・ボワファールと並べて論じたローラ・セレホ・ジェネスによるエッセイを収録。ボワファールは10年間、医学の世界から遠ざかっていたが、シュルレアリスム運動の最も象徴的な写真のいくつかを制作した。ルボンのように、ボワファールは写真の技術的な技巧を駆使し、最終的に内側から感じるのと同じように神秘的に現れる世界をフレームに収めた。本書はこの前提から始まり、血液があらゆるところ巡りゆくことの証明をルボンが収集し、加工し、再構成する姿を追う。初版1000部限定 288p 29x18cm ソフトカバー 2024 English
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