フィンランド出身のアーティスト、ジョッコ・ウェイランドが作り続けてきたZineシ
リーズ『ELK』の全34号の誌面をシャッフルして作られた作品集。
『ELK』は2003年6月に始まり、その後14年間にわたって全34号が刊行され
た。常に一貫したフォーマット(約20x14cm、60ページ程度の中綴じ、コピー製本。
内部は白黒、表紙はフルカラ)で、内省的でありながら粗削りな構成を持ち、拾い集
められた素材から得られる偶発的なつながりを媒介とし、ときに単純だが多くの場合
謎めいた暗示に満ちた組み合わせとして展開された。各見開きには、書籍や風変わり
な雑誌、美術作品、歴史文書、手紙、詩、スパムメール、恋文、広告など、さまざま
な出典から借用された画像とテキストの断片が対になって配置され、形式と構図の振
動のなかに隠された比喩的・形而上的な親和性をあぶり出そうとしていた。それぞれ
の画像や引用は複製・拡大縮小され、高尚な芸術とアンダーグラウンドな表現との境
界を無効にするような、しばしば馴染みのない素材の組み合わせとして蒸留されてい
た。明確な意図によって、不明瞭な起源を持つ儚い存在が形作られていた。一見する
と明確なテーマはないように見えるが、広範かつ鋭い審美眼によって配置された内容
は、手触りのあるがしばしば奇妙な方法で互いに関連していた。初号の刊行から20周
年という偶然も重なり、5年間の空白を経て『ELK』は帰ってきた。全274ページにわ
たり、ときに衝撃的だが魅惑的な取り合わせを見せ、広範な出典表記と包括的な索引
も備える。紀元前100年頃まで遡り、スリム・アーロンズ、ダグ・ジスコウスキー、
ティラナからサン=シュルピス広場、ポール・リヴィア中学校、ダンカーク(NY)を
経てさらにその先まで、ヨハン・ホイジンガの『中世の秋』から沈復の『浮生六記』
までを折りたたむように接続し、Jesper Fabricus、ロレイン・ハンズベリー、ナタ
リア・ゴンチャロワ、キース・レヴィン、シモーネ・マルティーニ、エドナ・オブラ
イエン、Ringl + Pit、Gee Vaucher 他多数が登場する本書は『ELK』の集大成、最後
の旅、白鳥の歌となる。「決して終わりとは言えない」が「究極の」という二重の意
味における完成形である。過去号の再編集ではなく、まったく新しい試みとしてあら
ゆる分野を網羅する驚異的な広がりを持ち、前例のない詩的な混合と再文脈化を行っ
ている。これらのページの中で『ELK』は、真面目でありながら遊び心に満ちた、思
いがけないつながりや含意を探る試みとしてその頂点に達している。私たちの計り知
れない集合的記憶──視覚と文字による遺産──の最果てから引き出された美学的・
文化的・社会政治的・歴史的な複雑な絡み合いが、時間・空間・主題の不可解な隔た
りを越えて橋渡しされており、私たちが現在共有している、普遍的でありながらも個
人的な秘密を含んだ現実の重なり合いを明らかにしようとしている。(publisher's
description)288p 20x14cmソフトカバー 2021 English
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