19世紀に起こった「写真の誕生」につよい刺激を受けてそれに反応しながら新たな絵
画を模索したモネ、ドガ、セザンヌら印象派の画家たちが訪れ制作した場所を、写真
家・鈴木理策木が巡って撮影した58点の作品。112p 25x34cm 58photo ハードカ
バー・クロス装 2020 Jap/Eng 30部限定 サイン・ナンバー入り。作家本人によ
る手焼きプリント1葉 付き(裏面にサインとエディション入 イメージが2種あるた
め各15部。シートサイズ:10×12 inch / イメージサイズ:8×10 inch)
*限定商品につき完売の際はご容赦ください
そのテーマのシンプルさから、『知覚の感光板』は、これまでの鈴木作品に親しんで
きた方はもちろん、写真・アート・表現に関心のあるすべての方が惹き付けられる大
きさを湛えた作品集となっています。しかし、同時に、『知覚の感光板』が、驚異的
なまでの緊密さと深さを携えた、鈴木理策のひとつの到達点とも評しうる作品である
ことはお伝えしておかなくてはなりません。それは、この作品が、鈴木がデビュー以
来一貫して持ち続けてきた独自の関心と方法論の結晶とも言えるからです。巻末に寄
せた作者自身によるテキスト「知覚の感光板」で、鈴木は次のように書いています。
カメラという機械による知覚は身体を持たないため、行動のために像を映し出さない
という純粋さを持っている。撮影時に現れているこの純粋さをその後プリントという
物質の状態までいかに残すことができるか、それが私の作業のモチーフである。この
純粋さを手に入れられれば、写真を見ることは拡がりだけでなく、深さを持った経験
になるのではないか。対象から何事かを感覚し、感応することは深さの経験であり、
深さは見るたびに新しく生まれる。(鈴木理策「知覚の感光板」より抜粋)
思えば鈴木理策の写真家としての歩みは、知覚の「純粋さ」を追い求める作業の積み
重ねだったのかもしれません。
ハンディな中判レンジファインダー機で視差=ズレを持ち込んだ初期作品『KUMANO』
『PILES OF TIME』に見られる身体から解放された目の自由で軽快な動き。『MONT
SAINTE VICTOIRE』の途中で大判カメラに移行してからの「視覚による知覚」への接
近と試行錯誤。
ただの一度として中断されることなく持続された鈴木理策の試みは、「写真の誕生」
による絵画のもつ意味の変容と向き合い、「絵画とは何か」と自身に問いながら絵画
の可能性を切り拓いた印象派以降の画家たちの歩みと共振しています。芸術家のある
べき姿を表したセザンヌの言葉をタイトルとするこの作品集に収められた58点は、そ
の一点一点が見ることと描く行為への挑戦と深く共振し、写真の可能性や「風景」と
の向き合い方を真に新しく拓くものと言えるでしょう。
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