イギリス人写真家であり、ロンドンを拠点とする出版社兼書店「IDEA」の創設者の一人であるアンジェラ・ヒルの作品集。エリザベス・ホワイトが初めて作者にストリートキャスティングされたのは1997年のことである。作者が共同創刊した雑誌『VERY』のために撮影され、その写真は同誌の表紙を飾った。そして今回、その『VERY』の表紙写真が本書のカバーにも採用されている。当時、作者が手がけた表紙は、そのシンプルさと誠実さによって高く評価されており、なかでもエリザベスの表紙は特に大きな反響を呼んだもののひとつだった。何度見ても飽きることのない、どこか謎めいた魅力をたたえたポートレートである。もちろん「IDEA」の「A」は「アンジェラ」の「A」であり、自身も出版者である。しかし同時に、今も昔も写真家でもある。2022年には『SYLVIA』を刊行。現在では3部作となった、一人の被写体を長年にわたって撮影し、その幼少期から思春期までを記録するシリーズの第1作にあたる。『SYLVIA』(2022年)、『EDITH』(2023年)、『THE X-GIRL SHOW』(2025年)刊行以降、作者は独自の個性を持つファッション・フォトグラファーとして、あらためてその存在感を示してきた。「ミュウミュウ(Miu Miu)」のキャンペーンをはじめ、『ジェントルウーマン(The Gentlewoman)』、『ファンタスティックマン(Fantastic Man)』、『マーファ ジャーナル(Marfa Journal)』など数多くの媒体で、作者ならではの自然体で半ばドキュメンタリーのようなスタイルによる撮影を手がけている。本書は、雑誌の切り抜き、ヴィンテージプリント、傷んだネガをスキャンしたイメージで構成されている。こうした質感は収録された写真によく馴染んでいるものの、意図的なスタイルとして選ばれたわけではない。作者が1990年代に撮影したアーカイブの多くは、引っ越しの際に失われたり、浸水によって破損したりしているからだ。本書に収められているのは、現在まで残されたもの、そして本というかたちになったことで、これから先も残り続けていくものでもある。また、『VERY No.8』(2000年)に掲載された作者の「FASHION ASSISTANT」ストーリーも、当時の誌面をスキャンしたかたちで本書に収録されている。オリジナルのネガは、すでに失われて久しい。この作品は後に「ピンタレスト(Pinterest)」上で再発見され、長年にわたってデザイナーやアートディレクターたちのムードボードにおける定番のリファレンスとなってきた。作者にとって、こうした作品集をつくる魅力のひとつは、自らの創作の過去を取り戻し、なぜ自分がこのような方法で写真を撮るのかをあらためて示すことにある。自身にとって、ムードボードからの影響などというものは存在しない。あるのは、ただ最初に生まれた衝動だけなのだ。
「私は、思春期という時間の移り変わりを見るのが好きです。変化すること、揺れ動く感情、何かを隠すこと、大人になったふりをすること。私自身は大人になって、たった一人で世の中に出ていくことを望んでいませんでした。家にいることで得られていた安心感、そのすべてから離れるのが怖かったのです。ある意味、私は彼女たちを通して自分自身を撮影しているのだと思います。あの年頃に自分がどんな気持ちだったのかを、今でもはっきりと覚えているから。私が撮っているのは、感情の記憶なのです。」— アンジェラ・ヒル 500部限定 96p 26x22cmハードカバー 2026 English
*10月入荷予定。
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