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No. 11806
連帯する美術批評—1970–80年代の日本と世界の写真をめぐる トランスナショナル/フェミニズムの視点
2,500円(税込2,750円)

 
本書が扱うのは、フェミニズム、ジェンダー、トランスナショナルという三つの視点から見た、1970〜80年代の写真をめぐる批評の歴史。中村公彦は、日系三世アーティスト、トミエ・アライの写真実践を通じて、日本軍のアジア侵略や米国の覇権主義という主題が、太平洋を越えて響き合う様を描く。久後香純は、雑誌『anan』とディスカバー・ジャパンの広告が作り上げた「女の一人旅」という文化装置を読み解き、その希望と限界—白人女性モデルを至上とする人種的ヒエラルキーへの加担—を鋭く指摘する。きりとりめでるは、富山妙子、富岡多惠子、宮迫千鶴という三人の女性による、写真と旅をめぐる思索を接木し、ウーマンリブ的連帯との複数的な距離を持つ彼女たちの批評の軌跡をたどる。 そして、本書最大の特色は、三者それぞれの書き下ろし論考に加え、各自が独自の視点で選んだ「再掲論文」を併載している点にある。上野千鶴子が1984年に『朝日ジャーナル』へ寄せたメディア論、富岡多惠子が『カメラ毎日』での連載に記した写真批評、富山妙子が自著の「あとがきにかえて」に残した旅と制作をめぐる言葉。そして、フェミニスト・アートを推進した最も初期の批評家の一人、ルーシー・R・リパードによる論考「包括的交流」の、待望の本邦初訳。過去に埋もれていた言葉の数々を、現在の批評的視座から掘り起こし、光を当て直す試みだ。 三人の批評家は、議論を戦わせしのぎを削るのではなく、互いの関心を共有し、協働することを選んだ。競争ではなく連帯によって編まれた本書は、写真という表現に本来備わるジャーナリズム性—社会の表に出ない現実、歴史に埋もれた真実、時代の権力によってかき消された声が、意図せず記録されている力—を、三様の批評的まなざしを通じて浮かび上がらせる。 過去の批評的実践を歴史化し、埋もれた仕事の功績に光を当てる本書は、写真文化・美術批評に関心を持つすべての読者にとって、新たな視座を開く一冊となるだろう。批評とは競争ではなく、協働によっても深められる、そのことを実践的に示した稀有な一冊でもある。 162p a5変 ハードカバー Jap/Eng 9784908122354

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