このプロジェクトは2017年にパリの狩猟自然博物館(Musée de la Chasse et de la Nature)から「Beau doublé Monsieur le Marquis!」展への参加依頼を受けたことをきっかけに始まった。当時のソフィー・カルは、自身にとって異質な世界だった「狩猟」という主題に直面し、別の切り口を探ろうとした。動物を追う行為にも、狩猟をめぐる物語にも共感できなかった彼女は、別の「追跡」の形に目を向ける。そして連想の連鎖のなかから、「愛の狩り」という概念が浮かび上がった。それは、一世紀以上にわたり新聞の結婚広告欄に書き連ねられてきたものである。この匿名の資料群は、彼女の作品を貫くいくつかの主題を反響させる。第一に調査、第二に観察、そして何よりも彼女が好んで用いる形式である分類と収集。何千もの広告が積み重なる背後には、人々の期待や願望、孤独の地図が徐々に姿を現す。1900年代初頭には結婚が主として経済的な取り決めであったのに対し、その後、ジェンダー平等や女性の経済的自立、道徳的な責任といった問題が台頭し、結果としてこの一世紀のあいだに社会的、倫理的、感情的な価値観がどのように変化してきたかが浮かび上がる。タイトル『On the Hunt』はさらに別の次元を導入する。それは見張ること、待ち伏せること、監視することの次元である。各年代ごとに、作家自身が選んだ男女およそ15件の広告が掲載され、それに対応するイメージがグラシン封筒の中に収められ、日本式の和綴じによって製本されている。両面印刷されたそのイメージの片面には赤外線カメラの自動シャッターによって捉えられた動物の姿があり(これらの監視画像は、フランスの高速道路周辺の野生動物を対象とした複数の狩猟協会の調査を通じてカルが入手したもの)、もう片面には猟師の見張り台が写されている。この本を読むことは能動的な体験となる。24枚の小さな封筒をめくりながら、読者は表と裏のどちらのイメージを見るかを自ら選ぶ。そのページを繰る行為を通じて、読者自身の恋愛相手探しの道筋が描かれていく。こうした形式は、タイトルが示唆するロールプレイをさらに押し広げる。狩る者か狩られる者か、観察する者か観察される者か。引き出し仕掛けの本(livre à tiroirs)として構想された本書は、ソフィー・カルが長年にわたり恋愛という領域で探求してきた権力、信頼、疑念、親密さの問題をさらに展開する作品である。同時にこの本は、この一世紀における行動様式の変化、欲望の捉え方、ジェンダー理解の変遷、そして感情的依存のかたちの移り変わりをも映し出している(publisher’s description)
112p 25x29cm ハードカバー 2026 English
掲載のイメージや情報は発売前のリリース情報に基づいて制作する場合があり現物と異なる際は現物を優先させて頂きます。
こちらはShelfのオンラインストアのページです。実店舗の在庫、扱い商品については店舗へ直接お問い合わせください。