ブルックリンに生まれカリフォルニアで育ったアメリカ人フォトグラファー、ラリー・サルタン(Larry Sultan)の作品集。1992年に初版が発表された同作の復刻版。
1992年に出版された初版が賞賛を浴びた「Pictures From Home」は、作者から両親への贈り物である。作者は1980年代を通じて定期的に南カリフォルニアの実家に戻り、その中で撮影した現代写真作品に、家族ビデオからのスチル写真、会話の切れ端、作家自身によるテキストや思い出の品々や出来事を組み合わせることで十年の歳月を記録。ドキュメンタリーとステージド・フォトグラフィー(演出された写真)の境界線がどんどんぼやけていくような物語のコラージュを創り上げた。撮影者と被写体との間には一定の距離感があるものだが、それもこの作品を特別なものにしている対話や感情のやりとりの中で消えていく。
オリジナル版に比べ、ページ数を大幅に増やしたMACK監修の本書では、この独創的な作品の持つ新しい視点を際立たせるため、文章と写真という二つの表現が二重奏のように共鳴し合う作品であることがよくわかるように配慮されている。ホームビデオの映画的な動きを強調するため、スーパー8フィルム(1960年代に発売された個人映画撮影向けのフィルム)で撮影されたスチル写真は新たにデジタル化・拡大し、裁ち落として見開きで配置。未収録だった写真も多数掲載され、レーガン時代のアメリカンドリームという典型的な時代背景をよそに淡々と日々を過ごす両親の姿をより鮮明に描き出している。また、「キング・オブ・カラーフォトグラフィー」としてその名を轟かせた作者に敬意を表し再編集、復刻されたということも、本書において最も重要な点である。196p 23x37cm ハードカバー 2017 English.
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