夕方から降りだした雨は、日が完全に暮れた頃には止んでいた。
でもビニール袋に入れたカメラ以外の全身がずぶ濡れで、それが原因なのか何件かの旅館で宿泊を断られ、暗い道を目的地もなく歩いていた。
雲間から少しだけ見える月は、飼い主とはぐれてしまった犬の視線のように、悲しげで弱々しい光を放つ。
ぼくは短い口笛を数回鳴らしてみた。
月の光に色付いた雲がゆっくりと流れていく、体から不安が少しだけ消えたように感じる。
振り返らず、立ち止まらず、とりあえず今夜はこの道の果てまで歩いて行くことにした。"
−村越としや
2004年から2005年に、日本各地を鈍行列車と徒歩で移動し撮影した村越初期の作品を集めた一冊。(publisher’s description)64p 24x31cm ソフトカバー 2017 Eng/Jap
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