「冬の北海道、道東。
薄曇りの空と雪がぼんやりとあたりを照らし、白くほのかな光りがどこまでも大地を覆っている。
真っ青な晴天の東京から来ると、そこには眠っているような静けさがあり、一気に遠い土地に迷い込んでしまう。
静けさに包まれて耳をすます。
白い無音の大地では、遠い森の樹々の枝から、ひとかたまりの雪が落ちる音までも、聴こえてきそうだった。
真冬の大地を巡るなか、夕暮れの凍った湖をちいさく一列になって渡るエゾシカの群れに遭遇した。
群れを眺めているうち、空と森とシカが一列に連なる自然の摂理を感じ、なにか神聖なものを見てしまったようなおごそかな気持ちになった。
海辺に出ると、渡り鳥が岬の気流にのって飛んで行く。北海道の真ん中を渡るコハクチョウには、そこが数十万年前に海岸線だった記憶が刻まれていて、今も過去の鳥の地図を継承し、渡りを繰り返しているという。
道東では、今まで感じたことのない大きな自然との一体感の中で、弱い光に包まれながら、私と鹿と自然が一本の道でつながっていくのだった。]
ーあとがきより 80p 23x28cm 59photo ハードカバー・クロス装 2020 Japanese
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