マーク・コーエンが写真界の注目を集めたのは、1973年にニューヨーク近代美術館で開催された個展がきっかけだった。この象徴的な展覧会はコーエンが60年代に爆発的に力を持ったストリート写真の後継者であることを美術界に証明した。そして現在30年以上の時を経て、コーエンの複雑で影響力のある作品群が、ロバート・フランク、ギャリー・ウィノグランド、ウィージーの作品に劣らない独創性と効果を持つ本書で紹介される。コーエンの写真は、荒々しく対立的なものから静かで敬意に満ちた穏やかなものへと急速に変化し、見る者に驚くべき美しさを突きつける。コーエンが「グラブショット」と呼ぶ写真が満載の本書では、写真家が故郷ペンシルベニア州の鉱山の町ウィルクスバラを狡猾にパトロールしている姿が容易に想像できる。彼のカメラはしばしばプレフォーカスと腰からのショットで被写体周りをスクロールしながら、味のあるディテールの断片を探る。そして被写体に向かって突き出されたストロボが突然炸裂して、ストッキングを履いた脚が角を曲がって忍び寄る様子や、むき出しの歯と伸びた唇の女性を激しく切り取る。これらのイメージには、人間の体と内臓的・性的に出会ったときの雑然とした世界が現れている。コーエンの写真では、被写体の一貫性のない反応もまた魅力的である。あるショットでは、若い女の子のグループがコートで顔を隠しレンガの壁に寄りかかってコーエンのカメラから少しでも身を守ろうと必死になっている。また別のショットでは、髪にグリースを塗り、櫛を取り出して魅力的に写ろうとする粋な青年が映し出される。けれどもノイズで写真が分からないと思うや、コーエンのカメラは瞑想するように後ろに退き、ウィルクスバラの庭や小さな町の住民の日常生活を繊細な構図で映し出す。ストリート写真の中でも特に複雑なコーエンの作品は、読者の目を大きく開かせページをめくることを止めさせない。 144p 31x24cm 100photo クロス装 2005 English
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