1970年代に京都市立芸術大学で学んだ森村泰昌は、美術史における名画の登場人物や歴史上の人物、女優に扮するセルフポートレートを制作することで、ジェンダーや人種を含んだ個人のアイデンティティの多重性を視覚化し、個人史と歴史の交錯点を表現してきた。近年では、ジャパン・ソサエティ(2018年)、プーシキン美術館(2017年)、国立国際美術館(2016年)、アンディ・ウォーホル美術館(2013年)、アーティゾン美術館(2021年)での個展開催のほか、「横浜トリエンナーレ2014」でアーティスティックディレクターを務めるなど、国内外で活躍を続けている。展覧会「森村泰昌:ワタシの迷宮劇場」(京都市京セラ美術館 2022年)は、これまでほとんど発表されることのなかった、1986年から撮りためている秘蔵のインスタント写真約800枚を中心に、35年余り継続されてきた私的世界の全貌を公開する初の試みとなる。何者かになり変わることで自己を解体し、一個人における複数の顔を露呈する森村の表現は、スマートフォンの進化やSNSの普及によって身近になった「自撮り」と共通しながらも、決定的に異なる面を持つ。そこには、自己への透徹した眼差しと、一人の人間が複数の存在として生きていくことへの圧倒的な肯定を見ることができる。本書は展覧会の核となる秘蔵のインスタント写真から成る一冊。森村自身が「ポラは私にとって、鏡を超えた鏡だとさえ言えるだろう」と言い表す、作品制作の過程で生まれたこれらのインスタント写真を作品集としてまとめ上げた。272ページのボリュームで、出品されている約800枚ものインスタント写真を全て収録。展覧会に使われたカーテンの色をイメージした布を表紙装丁に用いた決定保存版。272p 31x23cm ハードカバー・クロス装 2022 Eng/Jap
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