色を主題とした島尾伸三の写真集シリーズ《二分心》第一弾。長年にわたる写真家としての経験を経て、島尾は「言葉に置きかえられぬ」写真の魅力にあらためて立ち戻る。2000年以降に撮影した写真を見直す作業のなか、島尾は世界各地の旅先で遭遇した光景、さして理由もなくごく自然に視線が向けられたその瞬間の、その色彩に目を向けた。まず、「金色に輝いて見える風景を集めてみよう」と思い立つ。自身が幼年時代を過ごした奄美では、大切なものを黄金にたとえることを思い出してのことだった。島尾はこの写真集のシリーズを「二分心」と名付けた理由について、巻末のエッセイで次のように語る。「私の心が、小中学の時代に奄美大島で育ったがための動物的感覚と、東京で暮らすようになって 50 年にもなったために言葉で物事を考えるようになってしまった、2つの心を持つ事に気付いたからです。20歳あたりから言葉に支配されるようになり、なんだか実像を見ていないような寂しさがつきまとっています。いつも私は空と湖面に映った空の2つを眺めていて、どちらもが現実に思え、つかみ所の無い感覚に生きてきたようです。どうやら私は、子どもの頃の自然の声を聞いていた感覚を取り戻す為に写真を必要としてきたのかもしれません。」写真家の身体とカメラという機材を通して捉えられた、偶然の光の交差。それは背後にいる写真家の思考を超えて、他者とも共有できる光の交差であるはずだ。本書は、「金色に輝いて見え
る」光景に満たされている。そこではただ光の微風が漂い、見る者はあやふやな現実世界へいざなわれ、開かれた光の通路に佇むこととなるだろう。表紙の写真は奄美、裏表紙はトロント。そして本書に収録された写真の撮影地は、北米、欧州、アジアと広い範囲に及ぶ。ニューヨーク、ナザレ、リスボン、ミラノ、ベニス、ピサ、アムステルダム、香港、ソウル、長崎、そして東京の「黄金に輝いて見える」光景は名前のない場所
として隣り合う。300部限定。ナンバー入サイン付。48p 16x15cm ハードカバー 2022 Japanese
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