アメリカ人フォトグラファー、ボビー・ドハティの作品集。静物写真で高く評価されてきたドハティは、言葉遊びで結び付けられた個別のイメージを大胆に並べることで、独自の精緻な視覚言語を言葉にできない無意識の連想の場へと昇華させている。アロイホイール、花、飲み物の缶、ズッキーニ…という具合に、ひとつひとつは非常に分かりやすい。しかし全体として見ると、その意味は歪になってくる。アイスキャンディーの写真は、羽がボロボロになった蝶の隣に並べられることでまた違った重みを持つようになる。では、我々は何を見ようとしているのか?ドハティのイメージは、我々が何を平凡だと思い、何を特別だと思うかを突き詰める問いで我々を圧倒し、さらに大きな問いを投げかけようとする。それは「なぜあれよりこれが重要なのか」という次元を超えた「なぜ何一つ重要ではないのか」という問いである。
本作においてドハティは極めて一貫した視覚的実践のより内省的な表現を試みている。現代の静物写真や観察写真の多くが陥りがちな、視覚的に崩壊したイメージ過多の言語から離れることを促し、その代わりに、細心の注意と正確さをもって、観察された物事や場所を我々の眼前へと並べていく。それはいったい何を意味するのだろうか?気分が明るくなる色彩や巧みな構図から想像される以上に、作者はこの問いに真剣に取り組んでいる。スタジオの内外で5年に渡り撮影を続けたイメージから、前作『Seabird』で見せた温かみのある言葉を取り払い、韻を踏むように並べることで、イメージのカテゴリーを崩壊させている。
これらの写真は、写真による表現の本質を感じとることを我々に求め、多少居心地の悪い思いをさせる。視覚的なカテゴリーの継ぎ目を引き裂き、それぞれの写真からより多くのことを感じ取ると同時に、あまりそうしないように求めている。大きなものから小さなもの、壊れたものからきれいなままのものまで、ドハティが魔法のように作り出したイメージを次から次へと紹介し、読者が次のページをめくるのを息を潜めて待っている。120p 30x24cm 79photoハードカバー 2023 English.
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