写真家マイク・マンデルが、アメリカ写真史の巨人アンセル・アダムスの知られざる一面を掘り起こした1冊。タイトルの『Zone Eleven』は、アダムスが提唱した露出理論「ゾーンシステム」の範囲(Zone 0〜10)を超える想像上の領域を意味する。つまりこれは、アダムスの「典型」を超えた写真群への扉である。本書に収められた写真の多くは、アダムスの商業的・編集的な仕事や、ポラロイド素材を用いた実験的な試みに由来する。風景写真の詩人として知られる彼のイメージとは異なり、ここにあるのは都市の断片、社会的関係、孤独、そして構造物の冷たさ。マンデルは5万点以上のアーカイブを調査し、これらの作品を新たな文脈と対比の中で再構成した。1977年にラリー・サルタンと共に発表した『Evidence』で、マイク・マンデルは既存の写真に新たな意味を与える手法を確立した。本書はその精神を継承しつつ、アンセル・アダムスという偶像に対して静かに問いを投げかける。自然の崇高さではなく、社会の複雑さと人間の不在を写し出すアダムスの写真は、見る者の先入観を揺さぶる。本書は写真の見方を根底から問い直す一冊であり、アダムスの名を冠しながらも、そこにあるのはまったく新しい視座である。写真表現の可能性と、アーカイブの再解釈が交差するこの本は、写真愛好家、批評家、そして視覚文化に関心を持つすべての読者にとって刺激的なものとなるに違いない。112p 23x28cm 83photo ハードカバー 2021 English
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