本書のページをめくるとまず目に飛び込んでくるのは、どこか歪んだ奇妙な家庭的風景だ。ガレージのシャッターの赤い目、継ぎ接ぎの砂利の上に斜めに育つ木、放置されたショッピングカート、三角形の奇妙な装飾――まるで読めない空想の地図のような光景。そこには、意図的に空虚にされた住宅地の痕跡がある。人の気配はどこか遠くに感じられるが、それでもスタッコの外壁やアスファルトの路面、チェーンリンクのフェンスや車のボディ、そしてところどころに現れる草木が、確かに生活の痕跡を示している。ロサンゼルスとサンフェルナンド・バレーの間に広がる自身の住む地域にカメラを向けるエミリー・シュールは、歩く写真家というスタイルで、見慣れた場所に注意深く目を向ける。色や光、表面の質感を精密にフレーミングしながら、かすかなユーモアを交えた構図の喜びを追求する。本書は、わずかに斜めに、わずかにずらされた視線で切り取られた場所の肖像であり、道中で出会う細部や奇妙なものたちを楽しみながら、偶然性を重んじて歩く旅の記録でもある。
エミリー・シュールはロサンゼルス在住の著名なファインアート、エディトリアル、広告写真家。これまでに『ニューヨーク・タイムズ・マガジン』『ザ・ニューヨーカー』『ナショナル・ジオグラフィック』『タイム・マガジン』などで作品が取り上げられ、2017年には初の作品集『Super Extra Natural』を出版。これまでにロンドンのナショナル・ポートレート・ギャラリー、ヒューストン美術館、ハーシュホーン美術館、ICP、アメリカ歴史博物館などで展示され、ホイットニー美術館の永久コレクションにも収蔵されている。本書は、Deadbeat Clubから出版する初の写真集となる。(publisher's description) 144p 24x19cm ハードカバー Endlish
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