本書は、親密で詩的なモノクロームのポートレートで高く評価されている日本人写真家・野村佐紀子の魅力を余すところなく紹介する決定版モノグラフである。野村の作品は、「官能」「アイデンティティ」「孤独」といったテーマを深い感情のこもった視点で探求している。彼女は荒木経惟に師事した経歴を持ち、人間の身体を、あらわで無防備な状態で捉えることにより、光と影の繊細なコントラストを通して静寂、内省、欲望といった感情を引き出している。若く魅力的な被写体が多く、彼らの姿を通して、官能の力と緊張感が同時に表現され、同時に驚くほどのやさしさもにじむ。女性である野村が、男性と女性のヌードを撮影することで、日本における従来のジェンダー的・文化的ステレオタイプに挑戦し、親密さや人間性に対する新たな視点を提示している点も特筆すべきである。本書には、彼女の最も印象的な作品が多数収録されており、光と影をまるで筆致のように操る構図が際立っている。ほのかな官能と静謐な美の境界を曖昧にしながら、個人的でありながら普遍的な感情を捉えた作品群は、鑑賞者に強い共鳴をもたらす。本モノグラフは、日本写真、美術としてのヌード、女性写真家の表現に関心を持つ読者にとって欠かせない一冊であり、欲望、脆さ、人とのつながりといったテーマを、現代日本を代表する写真家の視点を通して探求する貴重な機会を提供している。(publisher's description) 232p 30x24cm ハードカバー 2025
マドリードのFundación MAPFREにて2025年の2月6日から5月11日の間展覧会開催。
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