世界各地の名建築や洗練されたインテリアを撮影してきた私的な作品群で長らく高い評価を受けてきたフランソワ・アラールは、今回、ふたつの新たな作品シリーズによって新境地を切り拓いた。
2024年初頭に肩を負傷し、アルルの自宅で静養を余儀なくされた彼は、身のまわりのものをポラロイドカメラで撮影し始めた。伝統的であると同時に抽象的でもある〈Flowers〉シリーズは、自然の美しさを探る魅力的な試みとなっている。ドリス・ヴァン・ノッテンが言うように、「ポラロイドは一瞬のきらめきを捉え、それが記憶として永続する。一方で、実際の花は生き生きと咲き誇りながらも、やがては枯れてゆく。そのことが、保存される美しさと儚い美しさが共存することを思い出させてくれる」。〈Art〉と題されたもうひとつのシリーズでは、選ばれたポラロイド写真を引き伸ばし、その上から絵の具やワックスなどを重ねることで、時間と記憶が積層したような質感を生み出している。被写体の多くは、古代彫刻やイタリア・ギリシャのルネサンス絵画の細部——たとえば大理石の頭部のクローズアップや、15世紀の衣服のひだの断片など。「古代的なものが現代的でありうるという感覚を探っている」と、アラールはキュレーターのビーチェ・クリガーとの対話で語る。「具体的な対象から出発し、それを別の、つかの間の存在へと変えていくのが好きなんだ」。花においては「儚いものを永続的なものへ」、古典的なアートにおいては「永続的なものを儚いものへ」と変換するアラールの視線が、これらの作品に強さと美しさを与えている。(publisher's description) 256p 35x21cm ハードカバー・2冊セット 2025
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