日暮れに相手の顔がはっきり見えず、「あなたは誰?」と尋ねた時間帯を黄昏時(たそがれどき)と言い、これは古語の「誰そ彼(たれそかれ=あれは誰だ?)」に由来している。そして同じように、夜明け前の時間を「かわたれ時(彼は誰時)」と呼んだ。これらは昼と夜、夜と朝の境界を表している。古来、日本では夜に禍々しいものが跋扈し、それらは夜明けとともに消えると考えられていた。しかし現代の都市生活においては、夜と朝を分ける時間を感じることは難しい。屋久島の森であれば、「かわたれ時」を捉えることができるかもしれない。夜が明ける前、まだ闇が支配する森へと足を踏み入れる。騒々しいほどの虫の音が聞こえる中、小さなライトを頼りに奥へと進む。足元を照らしていた光を前方に向けると、丸く切り取られたように森が浮かび上がる。新月の時期には、ライトを消すと自分の手すら見えないほどの漆黒に包まれる。やがて、空と森の境がうっすらと見え始めると、虫の音がぴたりと止み、代わりに鳥のさえずりが響き始める。それが夜明けの合図だった。目を凝らすと、木々の輪郭がぼんやりと立ち現れてくる。そこに広がるのは、色を持たない世界。僕はその時間を「Noctchrome(ノクトクローム)」と名付けた。それは、夜と朝とをつなぐ、ごくわずかな時間に現れるモノクロームの世界。花の匂いが漂い始めると、森に色が戻ってくる。それは、朝の始まりであり、地上にエネルギーが満ちていく時間でもある。― 渡部さとる(publisher's description)
72p 23x35cm ハードカバー 2026 Eng/Jap
*5月下旬入荷予定。
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