2019年、西宮市大谷記念美術館と東京都写真美術館による共催で、生誕120周年に際し大規模個展が開催された山沢栄子。その後も「I’m So Happy You Are Here: Japanese Women Photographers from the 1950s to Now」展への出展などをはじめ、近年、国内外での再評価が進んでいる。本書は、1970―80年代に手がけたカラーとモノクロによる抽象写真シリーズ<What I Am Doing>を中心に、抽象表現の原点を示す1960年代の写真集『遠近』を収載している。1899年に大阪に生まれた山沢栄子は、1920年代にアメリカで写真を学び、1931年、日本初の女性プロ写真家として大阪にポートレートスタジオを開設した。1960年に引退した後は、コンセプチュアルかつ実験的な表現へと到達する抽象カラー写真の制作に取り組んだ。しかし、その独自のスタイルは日本写真界の主流とは共通点を持たなかったため、これまで彼女の作品が詳細に検証されることはなかった。本書の主な目的は、アメリカ写真との関係性を通してそのキャリアを検証することで、国家的枠組みを超えた写真史の中に彼女の仕事を位置づけることにある。全4章は、山沢の抽象写真の背景を探るため、時間を遡る構成となっている。第1章では、1970〜80年代の抽象写真シリーズ《What I Am Doing》を紹介する。そこには、撮影機材を被写体とした作品や、過去作品を再撮影した作品など、高度にコンセプチュアルで自己言及的な作品群が含まれている。第2章では1962年の写真集『遠近』を完全収録し、第3章では彼女が接したアメリカ写真の実例を紹介、第4章では初期ポートレート作品と関連資料を通じて、その出発点を検証する。この構成により、日本写真の主流とは異なる地平で制作を続けた写真家としての山沢の長いキャリアを辿ることができる。「日本写真界に人多しといえども、山沢さんのような写真家は全く独自な存在である」(土門拳)
若くして米国に飛び立ち、日本の写真の流れとは異なる地平で創作を続けた芸術家の歩みを辿るとともに、女性写真家の草分けとして山沢栄子の「ひとつの道」を示す。1920〜50年代に山沢自身が執筆した3本のテキストの再録の他、近年の研究に基づく二人のキュレーター(池上司・鈴木佳子)による論考も収録。戦前の活動を伝えるポートレートや、アメリカ近代写真との関連を示す資料、疎開中の写真など、158点の図版を収載した決定版。(publisher's description)224p ハードカバー 30x21cm 2026
[山沢栄子(Karen Sato)]
大阪に生まれる。1918年私立女子美術学校日本画科選科を卒業。1926年渡米し、カリフォルニア・スクール・オブ・ファインアーツで油絵を学ぶ。
同時にアメリカ人写真家コンスエロ・カナガの助手となり、写真技術を習得。
1929年帰国、1931年大阪に写真スタジオを開設し、ポートレート写真家として活躍。戦後は企業の広告写真などを手がけたのち、抽象写真の制作を始めた。
1968年神戸に移り、1970-80年代に「私の現代」と題した個展を多数開催。
1955年大阪府芸術賞、1977年日本写真協会功労賞、1980年神戸市文化賞を受賞。大阪中之島美術館、東京都写真美術館、川崎市市民ミュージアムなどに作品収蔵。
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