私はとにかく何にでも反抗する人間だった。いま考えるとよく高校を卒業出来たと思うほど先生の言うことを聞かなかった。大学へ進んでからもそれはつづいて、暗室実習の時に着る白衣は、学校で買わされた時に一度着ただけで後は一度も着なかった。現像は温度計と計量カップを使わずに、すべて目分量でやった。それでも写真は出来た。そんな写真が少しづつ気に入りははじめていた。一九六四年十一月七日、アメリカ原子力潜水艦横須賀寄港に反対した全学連の闘争を撮影した。それは写真学校の教科書に掲載された名作写真とは逆のダメ写真を撮って、それだけで写真集を作ろうとしたのだった。被写体はピンボケでカメラも手ブレ、フィルムは粗粒子でザラザラなうえに擦り傷だらけ。写真をやめようと決めて、一年以上も高温多湿な場所に放置したので、乳剤面が貼付いてその跡がフィルムに残っていた。普通だと捨てる以外にないフィルムだが、私はそれを写真のマチエールに見立てて、全学連学生のデモを撮影した。(pr) 25p 29x30cm 12photo ソフトカバー 151部限定ナンバー入り 2015 Jap/Eng
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