No. 6787
Nicolai Howalt: Light Break, Photography / Light Therapy
デンマーク人ヴィジュアルアーティスト、Nicolai Howalt(ニコライ・ホワルト)が、デンマーク人として初めてノーベル賞受賞者となった科学者のニールス・フィンセンによって考案された光線治療法を探求し、目に見えない光をフルカラーで視覚化した作品をまとめた一冊。フィンセンによる光線治療の実験や装置がホワルトを魅了させる根底には、写真の基本性質がフィンセンの医学的光線治療法に類似するところがあるためと言える。どちらの事例においても、光線は特殊なレンズやフィルターを通り抜け感光性物質に到達し、フィンセンはこの性質を皮膚障害のある患者の治療に用い、一方ホワルトは太陽光を写真乳剤で処理した紙に直接当て保管することによって作品を制作。
20世紀初期に、フィンセンは連続スペクトルの光線を照射することにより治療を行うことが可能という概念を発見した。この概念を元にフィンセンの発見した光線に興味を持ったホワルトは太陽光線を利用し写真乳剤を黒くすることを試しみた。(この際、コペンハーゲンにあるメディカルミュージアムの協力により、ホワルトはフィンセンの長年保管されていたアーカイブ資料へのアクセスが許さている。)実際に、フィンセン自身が組み立てた原型レンズとカラーのクォーツフィルタを使用することにより、ホワルトは太陽の可視光線を吸収し、赤外線と紫外線を貫通させることに成功。そこへアナログの大判カメラを使用し、感光紙に一枚づつ太陽光線を当て現像することで制作されたすべてのイメージは、写真で最も一般的に作られるプリントでも複写物でもなく、自然の太陽光による産物であると言える。
“写真は目に写るものの複製という印象を無意識的にも人々に与える、ここではその反対に近い” - Nicolai Howalt
デンマークを拠点に活動する詩人モルテン・ソンダーガードは、本書において初めて母国語であるデンマーク語と英語訳された自身の三つの詩を寄稿。ホワルトとソンダーガードは共に実体、物質として、また人類にとって必要不可欠である太陽の生命力の魅力を共有し合う仲である。その他イギリスのウォーリック大学で医学史の研究をするタニア・ウォロシン博士とコペンハーゲンにあるメディカルミュージアムのヴァイスディレクター、イオン・マイヤーによる記事も掲載。本書のホワルトによる画期的な作品を医学史と美術史の視点から紹介している。
ホワルト自身が本書発行に伴い立ち上げたインディペンデント出版社「FABRIK BOOKS」から最初の作品集として発行。
27x23cm 256p ハードカバー 2015 English.
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