日本人写真家、鷹野隆大の作品集。
「1960年代半ばごろからカメラが一般に普及し始めた時、“写真は芸術足りえるのか”という疑問を持って多くの芸術家が写真を使い始めたが、それはすぐに世界を“見る”とは何であるのかという美術本質への問いかけへと変わった。そのことは、写真という定義をも変えることとなる。それまで備えてきた記録性や複数性を越え、その後に出てきたデジタルによる視覚的効果をも越えた、“見る”ことへの問いかけから世界が、”見える”ことへの認識を私たちに促すものとなった。イギリス人著述家、キュレーター、ロンドン芸術大学 カンバーウェル・カレッジ・オブ・アーツ 写真コース・ディレクターのダンカン・ウールドリッジ(Duncan Wooldridge)がそのエッセイの中で語るように、作者の写真はまさに私たちに“視覚をいかに見直すか”を示してくれる。我々は、作者の写真によっていかに世界が多面的であり多様性に満ちたものであるかを知るだろう。」− 千葉 由美子(Yumiko Chiba Associates)
芸術の世界では無視されがちなタイプの裸体を独特の描写で表現した、注目のシリーズ『ヨコたわるラフ』(1997–2001)を収録した一冊。タイトルはヨーロッパの古典絵画によくある「横たわる裸婦」のパロディであるが、作品はそうではない。キクオと出会う前から自らの美意識の可視化に取り組んでいた作者は、キクオとの出会いにこの探求を放棄するほどの衝撃を受けたという。ソファベッドに寝そべる、がっしりした全裸の中年男性、キクオ。それはまるで、ローマ神話の軍神マルスが美の女神として降臨したのに近い体験だったに違いない。キクオはそれから10年に渡って作者の創作意欲を刺激し続けた。28p 28x20cm ソフトカバー 2021 English.
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