写真家、小野啓が2002年から20年以上撮影し続けてきた日本全国の高校生を被写体とした肖像シリーズの集大成。『青い光』(2006年)、『NEW TEXT』(2013年)から続くシリーズ3冊目の写真集となる。
小野は、特に高校生という限られた年代は自分自身について懸命に考え悩むことのできる時期であり、その姿には人としての根本があると考え、このシリーズの撮影が始まった。そこには彼ら彼女らを撮影することで、「人とはなにか」という大きな問いの答えに少しでも近づけるのではないかという思いがあった。WebやSNSで被写体を募集し、「自分自身を写真に残したい」と願う高校生からのコンタクトを受け、地域は問わず全国へ赴く。そして、事前のやりとりで応募の動機や希望の場所をヒアリングし、彼ら彼女らからの想いを受け止めながら一枚の写真を形作る。この一連のやりとりを繰り返してシリーズは続いていった。
20年以上、途切れなく続けられてきたこの撮影が中断を余儀なくされたのはシリーズ終盤の2020年。新型コロナウイルスの地球規模のパンデミックによってだった。ポートレートを撮る写真家が人と会うことができない。写真家としての存在意義を根本から考えさせられるような事態になり、一時は写真を撮ることをやめようとすら思った。そんな状況から脱し、撮影を再開するきっかけになったのもまた高校生だった。学校生活以外にも多くの機会を失い、日本社会の中でもコロナ禍の影響をもっとも強く受けたいっても過言ではない学生たち。その状況を目の当たりにして、「このタイミングで彼ら彼女らの肖像を撮ることは、どこかの誰かのためになるのではないか」と考えて活動再開を決意。2022年に自粛が明けてからの約5ヶ月間、コロナ禍を経験した高校生たちを集中して撮影してシリーズは完結した。取り替えようのない、一人ひとりの高校生の「肖像」と、その人物の奥にある「背景」を収めることで「日本の風景」そのものの変遷を記録し捉えたい・・・そう願い、撮り溜められた本シリーズは彼ら彼女らのためのポートレイトであると同時に、時代のポートレイトでもある。128p 25x19cm ハードカバー 2024 Jap/Eng
[小野啓(Kei Ono)]
1977年京都府生まれ。2001年立命館大学経済学部卒業。2003年ビジュアルアーツ専門学校・大阪写真学科卒業。2002年より日本全国の高校生の肖像を撮り続け、写真集『青い光』(2006年・ビジュアルアーツ、青幻舎)を経て、『NEW TEXT』(2013年・赤々舎)を発表。その他の写真集には『暗闇から手をのばせ』(2017年・silverbooks)、『男子部屋の記録』(2019年・玄光社)、『モール』(2022年・赤々舎)などがある。『桐島、部活やめるってよ』(朝井リョウ)、『アンダスタンド・メイビー』(島本理生)など文芸書の装丁写真も数多く手がける。
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