多彩な活躍を見せる写真家・薄井一議による昭和シリーズの第四弾。
第四弾目となる本作は、フェデリコ・フェリーニの映画「甘い生活」からインスピレーションを受けたと薄井は語る。主人公の自由奔放な乱痴気騒ぎの日々と、奥底に流れる宗教心、その両面に揺れ動き葛藤する姿。聖と俗、両極なものが一人の人間の中に存在する事への共感でもある、と。薄井の昭和四部作は、昭和がまだ続いていたらと言うパラレルリアリティを描いている。それは現代のコンプライアンスによる自主規制からくる善悪の二極化への疑問から始まり、清濁ひっくるめてどさくさの時代を必死で凌いで行った昭和的生き様への憧れから生まれている。10年以上の歳月をかけて制作されたこのシリーズは、薄井が育った、今は消えつつある昭和の面影を残す場所を舞台にし、決してノスタルジーに偏らず、あたかも昭和が現在まで続いているかのように見る者を錯覚させる。アンダーグラウンド映画に出てくるような場所、そしてそこに暮らす人々、境界人、場所の気配、あるいは撮影者の想像の中の世界を描き出す薄井の写真は、そのイメージが現実なのか、それとも演出されたシーンなのかと鑑賞者は疑問に思うだろう。悲喜劇的で幻想的な現実とフィクションが混ざり合い、鑑賞者は写真の隙間に展開する物語を自身の想像で作り上げることが可能となっている。「猥褻と崇高」、「恐怖と滑稽」、「東洋と西洋」、「虚と実」、「生と死」といった、どこか人間の持ち合わせている矛盾、その二元の葛藤が薄井のイメージの中に埋め込まれている。(publisher's description)700部80p 26x18cm 40photoハードカバー・クロス装 2024 Eng/Jap
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