遠くに海が見える。でも、ここにあるのは、高く丸い山々、川、牧草地の広がる土地。そして、そこを行き交い、分かち合い、世話をする人々。この土地が、バスクの内陸部だ。フランスとスペインにまたがり、ピレネー山脈とビスケー湾のあいだに位置するこの土地は、野性味と誇りにあふれ、外から見れば神秘的で、どこか非現実的な場所のようにも映る。まるで、よそ者の視線から守るために霧がかかっているようだ。
それでもアン・リアリックは、その霧を越えて、1990年に初めてサン=ジャン=ピエ=ド=ポールという小さな村を訪れた。それから30年以上、彼女は何度もこの地に通い続け、世代をまたいで村の人々と関係を築いてきた。彼女の写真の強さはそこにある――被写体となる人々に対する、深く誠実なまなざし。そこにあるのは甘い憧れではなく、オープンで、温かく、寛容な視点。長い時間をかけて現場に身を置き、関係を築いてきたリアリックならではの、人間中心の写真観がにじみ出ている。
その姿勢は、構図にもはっきり表れている。正方形のフレームの中に集中された視点と繊細なモノクロの階調が共存し、バスクの美しさだけでなく、その荒々しい土地の感触や、時間とともに変わりゆく農村の現実までも写し取っている。「Gure Bazterrak(グレ・バステラック)」というタイトルは、バスク語のニュアンスを正確に訳すのは難しいが、「私たちの土地」という意味に近い。この作品は、土地に根を張る人々の強い結びつきを映し出すと同時に、リアリック自身が愛してきた人たちへのラブレターでもある。
本書は、アン・リアリックにとってDeadbeat Clubから刊行する2冊目の写真集。前作『You Will Look To The Mountains』に続く一冊。(publisher's description) 146p 29x24cm ハードカバー English
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