イギリス人フォトグラファー、ジェイミー・モーガンの作品集。表紙に赤く書かれた「Buffalo」は、1980年代のロンドンを中心に活躍した、伝説とも言えるスタイリスト、レイ・ペトリが牽引したクリエイティブ集団の名前である。即興で作られたその場限りの場としてあった「Buffalo」はのちに一つの現象となり、ファッション写真やスタイル、美学において1980年代のルック、フィール(雰囲気)、アティテュード(姿勢)を恒久的に定義づける存在となった。そのすべてが実を結んだ年、それがタイトルの1985年であった。撮影はジェイミー・モーガンが行なったが、1989年に40歳の若さでこの世を去ったレイ・ペトリとの協働によって制作は行われた。より広義的に捉えると、このチームにはグラフィックデザイナーであり『THE FACE MAGAZINE』誌のアートディレクターを務めたネヴィル・ブロディの名は欠かせず、本書の装丁を手がける人物に彼以外は考えられなかっただろう。『THE FACE MAGAZINE』でもそうであったように、本書の表紙はソングライターであり音楽プロデューサーのフェリックス・ハワードが飾る。
1980年代における「Buffalo」は家族のような関係性であり、ファッションモデルでありシンガーのニック・ケイメンと弟でありアーティストのバリー・ケイメン、シンガー・ソングライターのネナ・チェリー、モデルであり俳優のタリサ・ソト、映像ディレクターであるジェームズ・ルボン、スタイリストのミッツィ・ロレンツらが名を連ね、モデルのナオミ・キャンベルも「バッファロー・ガール」であった。ナオミ・キャンベルは15歳の時に、ケイト・モスは14歳の時に発掘されたが、フェリックス・ハワードはさらに若かった。時代は今とは違うものであり、「Buffalo」の時代だった。すべてはレイ・ペトリから始まったのである。ジェイミー・モーガンは、序文でレイ・ペトリと初めて会った時のことをこう語る。
「レイは黒いジーンズにペニーローファー、ポークパイハットを身に纏って入ってきた。気取らず軽快でクールな振る舞いの中、まるでスローモーションのように、空中に浮かんでいるかのように歩き、そして良い香りがした。今まで出会った中で最もスタイリッシュな人物だった。レイはちょうど10歳年上で、彼はこれまで私にいなかった『兄』であり、これまで私が一緒に暮らしたことのない『父親』だった。彼は私に、経験したことのない愛情と敬意を注いでくれた。絶えず無限に励ましてくれた。私はいつも自分の制作に対して懐疑的であったが、レイは正反対で、私に才能があって何でもできる、そう思わせてくれた。」
ジェイミー・モーガンとレイ・ペトリが1990年代以降も長く風靡するファッション写真のスタイルの原型を確立した一方で、今見るからこそ驚かされ素晴らしいと感じさせる写真も数多くある。象徴的な存在感を醸し出す表紙を捲ると、写真とスタイルが描き出す魅力と驚嘆が溢れ出す。クラシックなプリントもあれば、コンタクトシートから引き伸ばされた作品も見つけることができるだろう。
本書は、彼らが何を成し遂げたのかを体現する決定版的な記録である。同時に、成し得ることを示す一冊でもある。模倣のためではなく、勇気を持って写真や声明を生み出すための、真のインスピレーション源となりうる作品集であろう。本書に収録されるのは、それ自身がステートメントを放つ写真に他ならない。750部限定。136p 32x24cm 2025 ソフトカバー
*10月入荷予定。
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