パリの街は、ブラッサイを魅了してやまなかった。昼は新聞記者として働き、夜になると首都の通りを歩き回り、ビストロに入りびたり、社会の周縁で生きる娼婦や物売り、浮浪者や密会する恋人たちの生活のひとときを共にした。彼らが生きる夜の世界はブラッサイを強く惹きつけ、その写真は、闇を写しとるという技術的挑戦であると同時に、幽玄でドラマに満ちた夜の世界の肖像でもあった。1933年に初版が刊行された本書には、こうした詩情あふれる写真が60点以上収められ、都市写真の古典として確固たる地位を築いている。
ブラッサイはシュルレアリストたちと同じ界隈で活動し、1932年にはパブロ・ピカソと出会い、シュルレアリスムの有名な雑誌『ル・ミノトール』にも携わった。しかし、彼はあくまで独自の創造的視点を保ちつづけた。彼はこう語っている。「私の写真のシュルレアリスティックな効果とは、特定の見方によって現実が幻想的になったにすぎない。私が表現したかったのは現実そのものだ。なぜなら、現実こそがもっともシュルレアリスティックだからだ。」この唯一無二のモダンな視点は新たな世代の美術批評家や歴史家を刺激し、ブラッサイの生誕100周年は、パリのポンピドゥー・センター、ヒューストン美術館、ワシントンのナショナル・ギャラリー、ロンドンのヘイワード・ギャラリーで大規模回顧展が開催される契機となった。
今回の復刊は、20世紀写真史における重要な名作をふたたび読者の手に取り戻すものである。 (publisher's description) 96p 32x28cm 64photos ハードカバー 2025 English
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