Robby Muller: L.A. Polaroids
1980年代、オランダの名撮影監督ロビー・ミュラーは、アレックス・コックスやヴィム・ヴェンダースといった著名な監督たちと共に『レポマン』『パリ、テキサス』『バーフライ』『狼たちの街』など、その時代を代表する映画を生み出すために、何カ月も家を離れて過ごしていた。長い撮影を終えたあと、ミュラーが滞在していたのはサンタモニカのケンジントン・モーテルだった。オーシャン大通りの裏手、ビーチまで数歩という場所にあるシンプルなアパート式のホテルだ。壁に折り畳まれたアイロン台、コンロの上で湯気を立てるコーヒーポット、彼の相手をしてくれたホテルの猫ガーフィールド。素朴な快適さが気に入っていた。通り過ぎるだけの場所ではなく、どこか馴染み深いと感じられたのだ。ミュラーはいつもSX-70のポラロイドカメラを携え、仕事の合間に優しい眼差しで写真を撮った。ウィリアム・フリードキンが「異邦人の視点」と呼んだものをアメリカに向け、ほかの誰も気づかない細部をすくい取り、ステレオタイプを避け、光と色を本当の題材として追い続けた。これらのポラロイドには、今はもう存在しないロサンゼルスが写っている。小さな部屋、ビーチの縁、街角、車のために作られた都市を、歩くことを好んだ撮影監督の視線で捉えた風景。故郷を離れたひとりの人間が、行き交う空隙の中に静けさと光を探し求める姿がそこにある。(publisher's description) 96p 30x24cm ソフトカバー 2025 English
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