本書は、ドキュメンタリー写真家オレクサンドル・グリャディロフによる30年以上にわたる仕事をまとめた写真集。ライカで撮影されたモノクロ写真で知られる彼は、出来事や人物だけでなく、社会そのものがさらされる脆弱な状態――構造に亀裂が入り、支えが崩れ、そのもろさの中から本質が露わになる瞬間――を捉えてきた。
グリャディロフの実践は中央アジアからアフリカまで、さまざまな国や文脈に及ぶが、本書に収められているのはウクライナで撮影された写真のみである。ただし、それはアーカイブでも直線的な物語でもない。「時間は学術的なものではない」という彼自身の言葉が、本書の構成を規定している。年代順ではなく、彼の実践を形づくる四つの主題――変革と崩壊の時代としての1990年代、脆弱な状況の内側から世界を見る存在としての子どもたち、市民的自己決定の局面としての抗議、そしてウクライナ内外で長年撮り続けてきた主題としての戦争――に沿って編まれている。
彼のカメラは、信頼の場の中で機能する。普段は見過ごされがちだったり、外側からのみ語られがちな人々と向き合い、フレームの外へと続く強く持続的な関係性を築く。その結果、写真は「誰かについての証言」であるだけでなく、「彼らと共有される証言」となっている。
キャリアを通じてグリャディロフは、周縁に置かれた人々への一貫した眼差し、危機にあるコミュニティとの継続的な関わり、そして他者が目を背ける場所にとどまり続ける姿勢によって、ウクライナのドキュメンタリー写真の領域を形づくってきた。本作は、劇的な変化のただ中にある一つの国を、その停滞、緊張、トラウマ、そして尊厳において記録しようとする試みである。(publisher's description) 276p 29x29cm ハードカバー Eng/Ukr
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